かぜの養生法とおすすめの漢方薬

かぜの養生法とおすすめの漢方薬

「寒い所で体が冷えてしまい、翌日かぜをひいた」なんていうことはよくありますよね。漢方では、体が冷えると、病気に対する抵抗力が落ちていると考えます。そこで、普段から「かぜをひきやすい」という冷え症(冷え性)さんに、かぜの予防法と対処法をご紹介します。

かぜとは?

かぜ(正式には「かぜ症候群」)とは、主にウイルスが口や鼻から侵入し、粘膜に感染することで起こるさまざまな症状をまとめた病気です。かぜは単一の病気を指すものではなく、こうしたウイルス感染によって起こるさまざまな症状の総称(症候群という)のようなものと考えてよいでしょう。せきやのどの痛み、くしゃみや鼻水、ふしぶしの痛み、熱など、ウイルスの種類によって症状が異なります。なお、インフルエンザもかぜと同様、ウイルスによる感染症ですが、別のものとして扱われます。

かぜとは イメージイラスト

かぜの治療

漢方医学の考え方

漢方では「かぜにかかったらまずは体を温めて治癒を早める」と考えます。かぜをひくと熱がでるのは、ウイルスが熱に弱く、発熱によって増殖を抑えることができるからです。つまり、人は生体防御反応として体温をあげているのです。

漢方の役割はまさに体を温め、この生体防御反応をサポートすることです。体を温め、自然治癒力を高めることで、かぜの原因となっている「邪気(じゃき)」(※1)を体の外へ追い出します。それが、今現れている症状に対処していくという西洋医学と大きく違う点です。そして、そのために必要となる漢方薬は、その人の「証(しょう)」(※2)や、ひき始め、あるいは治りかけなど、かぜの時期によって異なります。


※1 体にとって不要で有害なもの
※2「証」とは、その人の状態(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方などの個人差)を現すもの。本人が訴える症状や、体格などの要素から判別


かぜの漢方薬といえば「葛根湯(かっこんとう)」というイメージですが、その人の体力や症状、証の状態などによっては別の漢方薬の方を用いたほうがよい場合もあります。


西洋医学の考え方

かぜの症状を引き起こすウイルスは200種類以上あるといわれています。代表的なものに、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、アデノウイルスなどがあります。

こうしたウイルスは、湿度が低く乾燥している冬に活動しやすいですが、高温多湿の夏にもウイルスは活動し、感染を起こす場合もあります。かぜとは、その原因となるウイルスの種類や感染した体の部分によって、さまざまな症状を現すもので、ひとつだけの症状で済まないことが多いのです。

代表的な局部症状
せき、たん、のどの痛み、鼻水、鼻づまりなど
代表的な全身症状
発熱、倦怠感、悪寒、頭痛、筋肉痛など

一般的なかぜの場合、ある一定期間が経てば治る病気なので、まずは、体を温め、安静にし、栄養と水分を補給するとともに、症状がつらい場合は、薬で対処します。

冷え症[冷え性]さんの漢方養生訓

かぜは、邪気が体に入ってしまうことが原因だと考えられています。とくに、体のバランスが乱れているときは、病気への抵抗力が落ちているので、邪気が入り込みやすくなります。

反対に、体に不可欠な血液や水分、気力の源などの「気・血・水(き・けつ・すい)」(※)のバランスがとれていれば抵抗する力が強くなり、邪気が入り込みにくくなります。同じ環境でもかぜをひきにくい人とひきやすい人がいるのは、そのためなのです。

冷え症さんで、かぜをひきやすいという方は、体が冷えているため、気血水のバランスが崩れてしまっていることが考えられます。抵抗力を高めるためには、体を温めるなど、「気・血・水」のバランスを整えていくことが大切です。また、日頃からかぜの原因となることを避けるように注意していきましょう。ここではかぜのときに必要な漢方養生訓を紹介します。

※体を維持するための3要素「気・血・水」
気(き):体をめぐっているエネルギーを表します。
血(けつ):血液や血液によって運ばれる栄養素、熱を表します。
水(すい):体内の液体のうち、「血」を除いたもののこと。


体の外から温める

温める箇所は、太い血管・筋肉があるところ

首、手首といった、太い血管がある部位や、太ももやお尻などの大きな筋肉がある部位を温めるのが効果的です。

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冷える足は靴下やカイロで温める

心臓から遠く、体の末端にある足は、もともと冷えやすい部位。放置をしていると、全身の血行不良となって、体の不調につながります。

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湯船につかる習慣を!

「冷え」には、ぬるめのお湯に少し長くつかるのが効果的だといわれています。最近はシャワーで済ませてしまうという人も多いと思いますが、湯船につかることは、血行を良くし、体を芯まで温めるので、ぜひ習慣づけましょう。

また、温浴効果を高める入浴剤の活用もおすすめ。体を芯まで温めることで血行を良くし、温浴効果によって疲れや肩こり、腰痛を緩和するといった効能をもつ製品もあります。

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ツボを温める

漢方では、「風邪(ふうじゃ):邪気の一つ」という「かぜ」の原因は、このツボから体に入ってくると考えられています。かぜをひきやすい人や冷えやすい人は、首の出る服装を避け、冷やさないようにしてください。

冷えとかぜには「風門(ふうもん)」というツボの周辺を温めるとよいでしょう。「風門」は、頭を前に倒したときに、後ろのえり首のところに飛び出た骨から下へ2つ目の骨の両側にあります。骨から左右指2本ぐらい離れた位置です。
また、寒気があるときは、首の後ろの「大椎(だいつい)」というツボをカイロなどで温めるとよいでしょう。「大椎」は飛び出た骨のすぐ下あたりです。

風門(ふうもん) イメージイラスト


食べて飲んで体を温める

体を温める食材を熱々で食べる

冷えたときに体が温まる食材といえば、ショウガですよね。それ以外にも、ネギ、サーモン、ラム肉など体を温める食材はたくさんあります。かぜをひきやすい、こじらせやすいという方は、体を温める食材を鍋やお味噌汁などにして熱々の状態で食べてください。また、みそ、コショウ、サンショウ、酢、トウガラシなど体を温める調味料を生かすのもおすすめです。

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温かい飲み物をこまめにとる

冷えを遠ざけるには、温かい飲み物をこまめにとることが大切。紅茶、ウーロン茶、ほうじ茶、プーアール茶、そば茶、鉄観音茶など、市販の茶葉が利用できるお茶も利用できます。こうした飲み物は、どんなときも意識的に温かいものを飲むように心がけましょう。

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バランスのとれた食事をする

かぜ予防のポイントは、冷えに負けない体をつくること。それには、バランスの良い食事を心がけることが大切です。

バランスの良い食事とは、適正なエネルギー量で、体に必要な栄養素を十分に摂取できる食事のことです。基本となる栄養素である、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルのほか、食物繊維なども必要です。肉や魚介、豆類、卵からたんぱく質や脂質を、野菜やきのこ、海藻などからビタミンやミネラル、食物繊維を、そして主食のごはんやパンから糖質を摂取します。

これらを1日の食事でさまざまな食材を組み合わせて摂るよう心がけましょう。献立は主菜1品+副菜1~2品、または主菜1品+副菜1品+汁物1品にすると、自然とバランスをとることができます。


乾燥に注意する

せきやたんはもともと気道に侵入した異物を排除して、体を守るはたらきのひとつ。せきやたんを抑える作用の西洋薬もありますが、生理的に必要なせきやたんを無理に抑えてしまうと、悪化する場合もあります。

せきを抑えたいときは、のどの乾燥に注意することがポイント。外出先では、ウイルスを避けるためにマスクを着用することはもちろんですが、外出後のこまめなうがいが重要です。うがいは、のどを洗浄したり、うるおしたりすることで乾燥を防ぎ、かぜの予防にも効果的です。また、室内にいるときも、適度な湿度調整により、空気の乾燥には注意しましょう。こまめな水分補給でのどをうるおすことも忘れずに。

かぜにおすすめの漢方薬

漢方の考え方では、本人の体質やかぜをひいてからの時期、症状に合わせて漢方薬を選択していきます。ひき始めのかぜ、こじらせたかぜ、治りかけのかぜといった、そのときの体の状態や、体質に応じて漢方薬を選びましょう。

葛根湯(かっこんとう)

ひき始めのかぜ -頭痛、肩や首のこわばりのある方に-

効能・効果

体力中等度以上のものの次の諸症:
感冒の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み

こんな漢方薬です

かぜの初期などの頭痛、発熱、肩や首の後ろのこわばり、寒気があり、汗をかいていない状態のときに用いられる漢方薬です。「葛根湯」は体を温め、発汗を促すことで熱を下げ、かぜを治していきます。

麻黄湯(まおうとう)

ひきはじめのかぜ -ふしぶしの痛みを伴う方に-

効能・効果

体力充実して、かぜのひきはじめで、さむけがして発熱、頭痛があり、せきが出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの次の諸症:
感冒、鼻かぜ、気管支炎、鼻づまり

こんな漢方薬です

かぜの初期で寒気や発熱、頭痛、ふしぶしの痛みを伴い、汗をかいていない方に用いられます。体力があり、胃腸が丈夫な方に向いた漢方薬です。「麻黄湯」は体を温め、発汗を促すことで熱を下げ、かぜを治していきます。

柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)

こじらせたかぜ -こじれたかぜでおなかが痛い方に-

効能・効果

体力中等度又はやや虚弱で、多くは腹痛を伴い、ときに微熱・寒気・頭痛・はきけなどのあるものの次の諸症: 胃腸炎、かぜの中期から後期の症状

こんな漢方薬です

かぜを発症してから3~5日経過しても症状が改善しないとき、いわゆるこじらせてしまったときに適している漢方薬です。発熱と悪寒が交互にくる、頭痛がする、吐き気があるといった方のかぜや胃腸炎を改善します。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

治りかけのかぜ -かぜが長引いて微熱や倦怠感が続く-

効能・効果

体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:
虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒

こんな漢方薬です

胃腸の消化・吸収機能を整えて、病気に対する抵抗力を高め、元気を補う漢方薬の代表です。治りかけのかぜに伴う倦怠感だけでなく、気力がわかない、疲れやすい、胃腸のはたらきが衰えている方、病後・産後で体力が落ちている、夏バテによる食欲不振などにも用いられます。