2020.12.01

養生のすすめ

薬膳

食べる温活のすすめ

冷え症の代表的な自覚症状は、「暖かい室内でも手や足元が冷える」「下半身が冷えてむくんでいる」などですが、「胃がもたれやすい」「おなかが張っている」などの慢性的な胃腸の不調も、実は内臓の冷えが引き金になっていることがあります。普段からなんとなく胃腸の調子が良くない方は、おなかを触ってみてください。冷たいと感じたら要注意です! 「食べる温活」に取り組み、体の内側から温めましょう。

温活は食べ物が重要

温活のなかでも、今日からすぐにでも取り入れられるのが、食事や飲み物の見直しです。とはいえ、毎食温活を心がけた食事をとるのはなかなか大変。そこで、毎日の生活に取り入れやすく続けやすい、「食べる温活」をご紹介します。

日本には古くから「食養生」という考え方があります。体が求める食事を正しく選ぶことで、健康を維持していくという考え方で、何を食べるかだけでなく、いつ、どうやって食べるかといったことまで広く含みます。まずは、この「食養生」の考え方に基づいた、次の3つのポイントを実践してみましょう。これだけでも、冷えを遠ざけ、胃腸の負担を減らすことができますよ。

「食べる温活」のポイント

  1. 冷えた食べ物や飲み物を控えましょう!
    アイスや氷の入った飲み物などの冷たいものをとると、胃腸が極端に冷えてしまい、胃腸本来のはたらきが低下します。
  2. 飲み物は常温や氷抜きのものにしましょう!
    何気なく買っていた飲み物の温度に気を付けたり、氷を抜くようにするだけで、胃腸にかかる負担は減らせます。
  3. 一日単位で考えて、トータルでバランスをとるように心がければOK!
    とはいえ、暑い日に冷たい物を飲みたくなることもありますよね。そんなときは、次に飲む物は温かいものを選んだり、夕食でお味噌汁や野菜スープを飲んだりするなど、一日の中で調節すれば問題ありません。

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体を温める食材と冷やす食材

「食べる温活」のポイントを押さえた食生活が、無理なく実践できるようになってきたら、次は食材に目を向けてみましょう。

薬膳の考え方

薬膳とは、漢方の理論に基づき、食べる人の体質や体調、季節などに合わせて、さまざまな「食材」を組み合わせた料理です。そして、「食材」が体にどのように作用するかを分類したのが、「食性」です。

食性は、「熱性」、「温性」、「平性」、「涼性」、「寒性」の5つに分類されます。日頃の生活では、「熱性」と「温性」を「体を温めるもの」、「涼性」と「寒性」を「体を冷やすもの」とまとめて、寒熱の偏りがない「平性」を「どちらでもないもの」と、大きく3つに分けて考えてよいでしょう。

体質や体調、季節に合わせて、「体を冷やすもの」のとり過ぎに注意し、「体を温めるもの」をできるだけ取り入れるよう心がけ、無理のない範囲で、おいしく冷えを撃退しましょう。また、普段食べている食材は「どちらでもない」に分類されるものが多くを占めています。栄養バランスを崩さないためにも「体を温めるもの」ばかりをとることは避けましょう。

体を温める食材

身近な食材で「体を温めるもの」をご紹介します。

肉類

鶏肉、鶏レバー、豚レバー など。

魚介類

アジ、イワシ、エビ、サケ、サバ、マグロ、ブリ など。

豆・ナッツ類

納豆、カカオ、クルミ、クリ など。

野菜

ショウガ、ネギ、ニラ、カボチャ、カブ、タマネギ、ニンニク、ワサビ など。

きのこ

マッシュルーム、マイタケ など。

果物

サクランボ、モモ など。

調味料

みそ、みりん、黒砂糖、コショウ、サンショウ、酢、なたね油、トウガラシ など。

飲み物

紅茶、ほうじ茶、黒豆茶、ココア など。

体を冷やす食材

身近な食材で「体を冷やすもの」をご紹介します。

魚介類

タコ、ワカメ、アサリ、カニ、昆布、海苔、ヒジキ など。

豆・ナッツ類

豆腐 など。

野菜

ナス、キュウリ、トマト、ダイコン、ホウレンソウ、ゴボウ、ジャガイモ、モヤシ など。

きのこ

シメジ、シイタケ など。

果物

スイカ、バナナ、メロン、イチゴ、ミカン、柿、梨、キウイフルーツ、オレンジ、グレープフルーツ など。

調味料

塩、しょうゆ、トマトケチャップ、白砂糖、ゴマ油、バター など。

飲み物

コーヒー、緑茶、牛乳、ビール など。

体を温める・冷やす食材の見分け方

日頃よく食べる食材の旬や主な産地を知っていますか? 今は便利な時代になり、一年を通してさまざまな食材が買えるため、食材の旬や産地があいまいになっています。ですが、昔の人は、自分が暮らす地域で作られた旬の食材を、体調や季節に合わせて調理方法を工夫して食べることで、体調管理に役立てていました。暑い季節には体を冷やす食材や調理法で体の熱を冷まし、寒い季節には体を温める食材や調理法で、体の内側から温めていたのです。

食材の見た目から「食性」を見分けるのは難しいですが、昔の人の食生活にならった、体を温めるものと、冷やすものの見分け方のポイントをご紹介します。

産地で見る

身近な食材の原産地の気候や風土を調べてみましょう。果物を例にあげると、スイカの原産地は南アフリカ、バナナは東南アジア、メロンはアフリカ大陸とする説が有力です。このような温暖な地域で育った食材は、多くが「体を冷やすもの」に分類されます。反対に、冷涼な地域で育った食材は、「体を温めるもの」が多いとされています。一部例外もありますが食材選びの参考にしてみてください。

旬の時期で見る

次に、本来の旬の時期を調べてみましょう。夏が旬の食材は、「体を冷やすもの」に分類されるものが多いとされています。

例えば、初夏から初秋にかけて旬を迎えるナスは、代表的な夏野菜のひとつ。ナスは利尿作用のあるカリウムが多く含まれ、尿とともに体内の熱も排出するため、体を冷やします。「秋ナスは嫁に食わすな」という有名なことわざをご存じでしょうか? その意味には諸説ありますが、ひとつには、「涼しくなってきた秋にナスを食べ過ぎて、体が冷えてはよくない」と、大事な家族の体を気づかう気持ちが込められているそうです。

反対に冬が旬の食材には、「体を温めるもの」に分類されるものが多いとされています。
しかし、食性にこだわりすぎるあまり、栄養が偏ってしまったり、食事の楽しみがなくなってしまったりしては逆効果。まずは、「体を冷やすもの」は食べ過ぎないようにし、加熱をしたり、温かいスープにするなど調理法を工夫したり、「体を温めるもの」と組み合わせるなど取り入れられることからチャレンジしてみてください。

冷えに負けない体をつくる基本の献立とは?

冷えに負けない体をつくるには、バランスの良い食事を心がけることが大切です。バランスの良い食事とは、適正なエネルギー量で、体に必要な栄養素を十分に摂取できる食事のことです。基本となる栄養素である、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルのほか、食物繊維なども必要です。肉や魚介、豆類、卵からたんぱく質や脂質を、野菜やきのこ、海藻などからビタミンやミネラル、食物繊維を、そして主食のごはんやパンから糖質を摂取します。

これらを1日の食事でさまざまな食材を組み合わせて摂るよう心がけましょう。献立は主菜1品+副菜1~2品、または主菜1品+副菜1品+汁物1品にすると、自然とバランスをとることができます。

外食や中食時のメニューの選び方と注意点

外出してレストランなどで食事をすることを「外食(がいしょく)」というのに対して、「内食(うちしょく)」とは、家で素材から調理したものを食べることをいいます。そして「中食(なかしょく)」とはその中間にあり、お弁当やお惣菜など家庭外で調理や加工されたものを購入して食べる食事を指します。コンビニやスーパー、デパ地下、エキナカなどで購入するテイクアウトの他、デリバリーやケータリングも含まれ、中食の利用は年々増加傾向にあります。

外食や中食は手軽で簡単! 忙しいときはもちろん、体力的に料理を作るのが厳しいときや、料理作りを休みたいときの強い味方です。でも、好きなものばかり選んでしまいがち。そんなときには、基本の献立の構成を意識したメニュー選びを心がけ、上手に活用しましょう。次に、外食や中食の定番を例にあげて、選び方や注意点などポイントをご紹介します。
ファミレスなどで外食するときは、揚げ物の盛り合わせなど調理法がかたよっているものは控えて、野菜やきのこ、海藻を使った副菜があるメニューを選び、調味料をかけ過ぎないように気をつけましょう。さらに温かい汁物をプラスすると体の中からぽかぽかに。代謝を上げる発酵食品である味噌を使った味噌汁はとくにおすすめです。

コンビニで買ってさっと済ませたいときに、パンかおにぎりで迷ったら、おにぎりがおすすめです。パンの原料である小麦粉は体を冷やすとされています。具材は体を温める鶏肉や納豆、シソが入っているものや、ショウガやニンニクがきいたものを選びましょう。もち米は体を温める食材なので、おこわや赤飯もおすすめです。また、炭水化物に偏りがちなので、おにぎりだけではなく、野菜やきのこ、海藻を使った温かいスープや煮物などをプラスしましょう。

ファストフードではサイドメニューはサラダを選び、揚げ物は控えめに。また、前後の食事で、脂質を減らしてたんぱく質を増やしたり、ビタミンやミネラルを多く含む野菜や海藻などを積極的にとるなど1~2日間の食事でバランスを調整するよう心がけましょう。

ラーメンは、タンメンなどの野菜を使ったメニューを選び、塩分・油分の多い汁は残しましょう。とくに下半身が冷えて、むくみが気になる人は、塩分や水分を控えて、利尿作用のあるカリウムを多く含む食材をとりましょう。カリウムは、バナナやメロンなどの果物、ホウレンソウなどの野菜、サツマイモなどのイモ類に多く含まれています。

外食や中食を上手に活用しつつ、バランスの良い食生活を心がけることが、冷えに負けない体作りにつながります。

温活レシピ

食事内容をコントロールしやすい自炊もおすすめです。特集記事「いつもの食材でまいにち薬膳」では、料理家で国際中医薬膳師の齋藤菜々子さんによる、ショウガやニンニク、長ネギなどの血行を良くして体を温める食材を使ったレシピや、カボチャや甘酒などの体を冷やさない食材を使ったレシピをご紹介しています。ぜひご覧ください。

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温活におすすめの飲み物

お茶やスープなど、冷え症さんにおすすめの飲み物をご紹介します。自分の体調や好みに合ったものを選び、体の内側から温まりましょう。

お茶

冷え症さんにおすすめのお茶をいくつかご紹介します。マイボトルに入れて持ち歩けば、オフィスや外出先でも、さっと水分補給しながら、体を中から温めるのに役立ちます。

ショウガ紅茶

古来、漢方原料にも使われ、体を温めることで広く知られているショウガ。生のショウガには、血液の流れを助ける<ジンゲロール>が、熱を加えた乾燥ショウガには、体の中から熱を作り出すのをサポートするといわれる<ショウガオール>が豊富に含まれています。

作り方

黒豆茶

昔から日本人に親しまれてきた黒豆。その種皮には<ポリフェノール>が豊富に含まれ、血流改善の効果が期待できるといわれています。ノンカフェインなので、時間帯を気にせず飲める点もポイントです。

作り方

そのほか体を温めるとされる飲み物

ほうじ茶、紅茶、ウーロン茶、鉄観音茶、プーアール茶、そば茶など。

スープ

食事のときは、温かい汁物をプラスするように心がけましょう。代謝を上げる発酵食品である味噌を使った味噌汁や、体を温めるショウガやニンニクがきいたスープはとくにおすすめです。

スムージー

流行りのスムージーは、冷たいままだとおなかを冷やすので、ホットスムージーにするのがおすすめです。作り方は、ミキサーで材料を混ぜて、鍋や電子レンジで温めればできあがり。手軽なのでぜひお試しください。

白湯

白湯は、強火で沸騰させたお湯を、ぬるま湯になるまで冷ましたもの。とくに、朝1杯の白湯は、現役のモデルや女優さんにも人気の美容法のひとつです。ぜひ朝一番に飲んで、体を内側から目覚めさせましょう。マイボトルに入れるのもおすすめです。

健康や美容の面で注目されている甘酒には、酒粕から作るものと、米麹から作るものがあります。冷え対策にはとくに酒粕甘酒がおすすめです。酒粕には、血流を改善し、体を温める効果があることがわかっています。

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冷え症さんが体を冷やす食べ物を避けることは理にかなっていますが、こだわり過ぎる必要はありません。旬の食べ物は、その季節に起こりやすい不調を防ぐといわれています。旬の食べ物を適度にとりながら、バランスの良い食事を心がけ、冷えに負けない体をつくりましょう。