2020.09.01

漢方ブログ

漢方で考えるむくみの原因と改善方法・おすすめの漢方薬

むくみ(浮腫)とは、痛みや赤みを伴うわけではないのに、顔や手足が腫れているような状態をいいます。水分をとり過ぎた翌朝にまぶたが腫れる、アルコールを飲んだ朝に顔がパンパンに腫れる、夕方になると靴や指輪がきつく感じる、ふくらはぎが張った感覚があるなど、むくみの現れ方は人によってさまざまです。

むくみとは

漢方でいうむくみは、体の中の水分が偏ったり滞ったりする「水毒(すいどく)」の状態だと考えられています。余分な水分が溜まっている場合と、反対に水分が不足している場合がありますが、水分が滞っているところによって症状は異なります。なお、むくみの原因となる水分は、血液中の水分が血管から外にしみ出したもの。特定の場所の皮膚や筋肉など、細胞の周りに溜まることで、むくみの状態になります。

むくみの原因

冷えによる影響

冷え症の方の場合は、滞った水分が体内で冷え、それがさらに体を冷やすという悪循環が起こりやすくなります。また、むくみによる余分な水分が、血管やリンパ管を圧迫し、血行を悪化させてしまい、さらに冷えをまねくこともあります。

運動不足

運動不足によって筋肉が弱くなると、血液を心臓へ押し戻す力が弱くなります。とくに心臓からもっとも遠くにあって、むくみやすい足の血流には、筋肉の収縮が必要不可欠。足を動かせば、筋肉が収縮して、血液を心臓まで戻す力がはたらくという仕組みなのです。そのため、長時間同じ姿勢で足の筋肉を使わないでいると、血液が戻りにくくなり、むくみを生じやすくなります。とくに女性は元々、男性に比べ筋肉量が少ないため、むくみやすい傾向があるといわれています。

睡眠不足

睡眠不足もむくみに関係することがあります。十分に睡眠や休息ができない場合、自律神経のうち血管の周りの筋肉を収縮させる交感神経が優位となり、血流が滞る時間が長くなり、むくみが起こると考えられます。

姿勢の悪さ

立ち仕事やデスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると、ふくらはぎの動きが制限され、筋肉の収縮で血液を心臓まで戻す機能がうまくはたらかなくなってしまいます。そのため、長時間同じ姿勢を続けていると血流が悪くなり、むくみが生じやすくなると考えられています。

ストレスによる影響

ストレスがたまると自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になり血管が収縮している時間が長くなることがあります。ストレスが直接の原因ではありませんが、血行不良をまねきやすいため、むくみの一因と考えられます。

女性特有の原因

生理前に、全身や顔がむくむという方もいます。この原因の多くは、女性ホルモンが関係しています。排卵後に分泌量が多くなるプロゲステロンは妊娠を助けるホルモンでもあり、妊娠した状態を安定させるために水分を体の中に溜め込むというはたらきがあります。この影響により、生理前にむくみが生じやすくなり、ときには体重が増える人もいるようです。

また、更年期女性特有のむくみの原因として、女性ホルモンの低下があげられます。エストロゲンという女性ホルモンには、脂肪の蓄積を抑えたり、水分の排泄を促したりするはたらきがあります。しかし、更年期となる40代を境にエストロゲンの減少が始まり、水分の代謝が低い状態となってしまうのです。

日常生活でのむくみの改善方法は?

温める

体が冷えていると、末梢血管での血液循環が悪くなり、むくみにつながります。運動で筋肉量を増やすことも大切ですが、一時的なむくみに効果的なのは体を温めること、冷やさないことです。とくに手足を冷やさないように、カイロを使う、靴下を履く、手袋をするなど、普段からのちょっとした対策を心がけましょう。

入浴する

入浴で体を温めましょう。簡単にシャワーですませるのではなく、しっかりと湯船につかることが大切です。

むくみやすい下半身を重点的に温めたいときは、40℃以下のぬるめのお湯に、みぞおちあたりまでお湯につかる半身浴がおすすめ。20分以上つかることでじわじわと汗をかき、効果的です。湯船から上がる前に、「熱い」と感じる温度まで追い炊き(or足し湯)をすると、体温を逃さず、湯冷めしにくくなります。

冷え取り上手な人は、入浴剤を上手に活用しています。入浴剤とは、入浴そのものによって得られる、「体を温める」などの温浴効果や、「肌の汚れを落とす」などの清浄効果をより高めるもの。古くから日本人は、天然の温泉や薬用植物による薬湯などの入浴剤に親しんでいることから、入浴剤も人気です。

とくに手足のむくみが気になるときには、手浴や足湯だけでもおすすめです。

運動やストレッチをする

足のむくみには、少し動かす、少し歩く、土踏まずを親指で押すなどのほか、軽くストレッチをしたり、ウォーキングをしたり、血流を良くして体が温まるような適度な運動を心がけましょう。

スクワットは太ももの前後、お尻、ふくらはぎなどの筋肉に一度に負荷がかかるので、心臓から流れてきた血液を戻すポンプの役割を担う足の筋力アップにつながります。この筋肉を鍛えることで、血液循環をよくして、むくみを改善します。

スクワットの方法

むくみに良い食材を食べる

むくみの原因の一つといわれる「塩分のとり過ぎ」。塩分(ナトリウム)を摂り過ぎると、体が体内の塩分濃度を薄めようとして水分をため込みます。すると、体内に余分な水分が溜まってしまい、むくみを起こしやすくなるのです。塩分を排出してくれる栄養素カリウムは、むくみ改善には欠かせないミネラル。アボカド、バナナ、キュウリなどに多く含まれています。

また、食事でいうと、冷えからくるむくみの改善には、利尿作用のある食材をとり入れ、体に滞っている水分の排出を促すことが基本。利尿作用のある食材には、小豆、キュウリ、トウモロコシ、ナス、トウガンなどがあります。このうちキュウリ、ナス、トウガンなどは、体の熱を冷ます性質をもっているため、冷え症(冷え性)の方には冷えが気になる食べ物ではありますが、これを食べ方で補うのが漢方の考え方。調理するときに、たとえばみそ、黒砂糖、コショウ、サンショウ、酢、なたね油、トウガラシなどの体を温める調味料を使ったレシピでバランスをとるようにしましょう。

部分的なむくみの改善方法は?

顔のむくみ

寝起きにまぶたが腫れぼったくなっているときにおすすめなのは、まぶたのマッサージや首のストレッチなど。血液やリンパの流れを良くするための朝の応急処置をご紹介します。

まぶたのマッサージ

顔のむくみは、余分な水分が顔にたまっている状態。むくんだままメイクはしたくないですよね。そこで、血行を良くするマッサージ! まぶたの周りを、10回程度円を描くようにやさしくマッサージします。目の周りの血流を良くするマッサージが効果的です。

首のストレッチ

リンパが集中する首の周り。首を左右に倒すストレッチは、凝りをほぐし、リンパの流れを良くします。首を片手で押さえ、もう片方の手で頭を押さえて、反対のほうに倒しましょう。2、3回繰り返すだけでも、顔や下半身のむくみに効果的です。

手のむくみ

指輪がきつい、手指がこわばるなど、とくに指のむくみを感じたときは、指や手全体を温めて血行を良くしてみましょう。できれば全身を温めるのが効果的ですが、できない場合は手浴が効果的。洗面器に40℃ぐらいのお湯を入れて、手全体を浸けて温めてください。

また、次のような手指のもみほぐしもおすすめです。

  1. 手のひらの真ん中を上下にもみほぐします。
  2. 親指の付け根を内側にもみほぐします。
  3. 小指の付け根を上に向かってもみほぐします。
  4. 1から3を30秒で左右繰り返しましょう。

足のむくみ

足のむくみは、足先から心臓に戻る血液を送り出す筋肉のこわばりをほぐすストレッチ運動が効果的です。おすすめは立ったままできるかかとの上げ下げエクササイズ。電車に乗っているとき、キッチンに立っているときに次のように実践してみましょう。

  1. つま先立ちでふくらはぎに負荷を感じるところで15秒程度静止します。
  2. 地面にかかとを降ろして、しばらく休みます。
  3. 1と2を交互に繰り返しましょう。

むくみにおすすめの漢方薬

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

冷え症の方のむくみにおすすめです。

漢方処方

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

効能・効果

体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り

こんな漢方薬です

「血」の不足を補い、流れを良くし、体内の水分の偏りを調整することで体を温めるのが「当帰芍薬散」。やせ気味で体力のない人の足腰の冷え症などを改善します。

五苓散(ゴレイサン)

二日酔いや水分のとり過ぎによるむくみにおすすめです。

漢方処方

五苓散(ごれいさん)

効能・効果

体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹)のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔

※しぶり腹とは、残便感があり、くり返し腹痛を伴う便意を催すもののことである。

こんな漢方薬です

水分代謝が悪く、余分な水が体にたまってしまう場合に、水分代謝にはたらきかけてむくみをとる漢方薬です。体力に関係なく使用でき、水分の摂り過ぎなどによるむくみや二日酔いの症状(吐き気、頭痛)を改善します。

防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)

水太りタイプで、特に下半身のむくみが気になる方におすすめです。

漢方処方

防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)

効能・効果

体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症:肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症( 筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)

こんな漢方薬です

水分代謝が悪く、余分な水が体にたまってしまう場合に、水分代謝にはたらきかけてむくみをとる漢方薬です。体力は中程度から虚弱で、色白で筋肉が柔らかい、とくに下肢がむくんで関節が痛むようなことがある、いわゆる水太りタイプで、疲れやすく、汗をかきやすい人に適しています。肥満症の薬として注目されています。

この改善法は間違っている?

Q.寝るときにむくみ着圧ソックスを履くのは間違いですか?
A.着圧ソックスは、ふくらはぎの血行促進を助けることでむくみを予防するために利用する人も多いようです。冷えを伴うむくみにお悩みの方には、夏でも足や足首を冷やさないように、靴下を履くことは悪くありません。
ただし、締めつけ過ぎは、かえって血液やリンパの流れが滞ってしまい、むくみを悪化させてしまうおそれがあります。足首やひざなどの一部にあとがつくほどの圧迫もよくありませんので気をつけましょう。
ちなみに最近では、足の血液循環に影響がないように設計されている着圧ソックスもあります。

Q.むくんでいるときは、水を飲まないほうがいいの?
A.むくみがあると、水分を控えようとする人も多いのですが、基本的に水分は適切に摂ることが大切です。むくみは摂取する水分の量ではなく、排出できない状態が問題です。どうしてもむくみが気になる場合は、少しずつに分けて、十分な量を飲むようにしてください。

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