2018.01.01

漢方ブログ

漢方薬の飲み方と効能を知る

漢方薬は、生薬を複数組み合わせてつくられています。単独の生薬では得られない「組み合わせの妙」によって、体全体を整え、人がもともともっている病気と闘う力や自然治癒力を高めます。

漢方とは

漢方の歴史

漢方のおおもとは、治療に対する人の体の反応を土台に体系化した中国の医学です。こうした経験からくみ上げられ、得られた知識による医学が、中国から日本に導入されたのが5~6世紀頃。その際、多くの処方や生薬、医学の知識が持ち込まれたそうです。

その後、室町時代までは伝来した中国の医学にそって診断や治療が行われていましたが、それ以降、日本国内の風土や気候、日本人の体質やライフスタイルに合わせて、独自の発展を遂げました。現代医療で用いられている漢方医学や漢方薬は、日本の伝統医学として発展した日本独自の医学なのです。

ちなみに、「漢方」という名称の由来は、西洋医学である「蘭方」と区別するためだと言われています。また、中国の伝統的な医学である「中医学」とも異なります。

西洋医学と漢方医学の違い

漢方医学も西洋医学も「病気を治療する」という根本の目的は同じですが、アプローチの仕方が異なります。
違いを簡単に説明すると、漢方薬は複数の生薬(さまざまな成分)を組み合わせ、それぞれの生薬がはたらき合って体全体を整えていくので、多様な症状に効果を発揮します。漢方医学は、患者の病状(訴え)や体質を重視し、それを見ながら薬を処方します。そのため、体質に由来する症状(機能性の月経痛や冷え症、虚弱体質など)、検査に現れにくい不調(更年期障害の症状)などの治療を得意としています。

一方、西洋薬の多くは、起こっている症状に対処する有効成分を中心として作られています。血圧を下げる、細菌を殺す、熱や痛みをとるといった目的に対して、ピンポイントに効く治療薬によって、症状などを抑えるのに優れた効果を発揮します。西洋医学では、主に検査を重視し、その検査結果から病気の可能性を探ったり、治療法を考えたりします。検査結果や数値などにしっかり表れるような病気を得意とします。

漢方薬の効果

漢方薬の特徴

先人の治療経験が集積された伝統的医学

漢方薬は、何千年という長い年月をかけて行われた治療の経験によって、どの生薬を組み合わせるとどんな効果が得られるかが確かめられ、漢方処方として体系化されました。

生薬を混合した漢方薬を処方

漢方薬は、天然物がベースとなった生薬を組み合わせてつくられています。西洋薬と異なる点は複数の生薬成分が1剤に含まれ、生薬同士が補い合いながら、体全体を整えていくので、さまざまな症状に対する効果が期待できます。

自然治癒力を高める

漢方医学は自然治癒力を高めて体調を整える医療です。そのため漢方薬は、患部だけでなく、全身の状態を改善することを目的としています。漢方医学は自然治癒力を高めて体調を整える医療です。

異病同治、同病異治

漢方医学は個人の自覚症状や体質をみて、からだ全体のバランスを整えていくオーダーメイドのような医学です。そのため、同じ病名でも患者さんによって飲む薬が異なります。これを「同病異治」といいます。
逆に、ひとつの薬がさまざまな病気に応用されることもあります。これを「異病同治」といいます。体質や病態に合わせた治療が基本となるのが漢方医学です。

心身一如(しんしんいちにょ)

漢方医学では「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方があります。「心と身体はひとつ」と総合的に捉えます。漢方薬は身体だけでなく心も含めたからだ全体のバランスを整えることで、心身ともに健康へと導きます。

漢方薬の効果は?

漢方薬を飲んでどのくらいで効果が得られるかは、症状によって異なります。漢方薬は、飲んですぐ効くタイプのものと、飲み続けることで効いていくタイプのものがあります。たとえばかぜや発熱などの急性の症状では症状に変化が現れやすく、慢性的な症状では、体質や程度によっても差がありますが、2週間~1か月程度で症状に変化が現れるようです。また同じ病気、たとえばかぜでも、発症してからの経過日数、症状によって用いられる漢方薬が違うといったケースがあります。

漢方薬の副作用は?

漢方薬は植物など生薬を混合して作られているので、体への負担や副作用が少ないイメージがあります。しかし、食欲不振やむかつき、血圧上昇、肝機能異常(皮膚や白目が黄色くなる、疲れやだるさがあるなど)や低カリウム血症(手足のだるさ、こわばりなど)といった副作用が生じることもあります。これは、含まれている生薬の成分が体に合わなかったり、症状に合っていなかったりするためです。そのような症状があらわれた場合は、医師、ドラッグストア・薬店・薬局の薬剤師または登録販売者に相談するようにしましょう。

なお、副作用がなくても、1か月以上同じ漢方薬を飲んでも変化が現れない場合は、体質や症状に合っていない可能性があります。その場合は、医師、ドラッグストアや薬店・薬局の薬剤師または登録販売者に相談するようにしましょう。

漢方薬の飲み方

服用のタイミング

漢方薬は、決められた分量・回数を守って服用しましょう。食前に、水または白湯(さゆ)で飲むのが基本です。

食前とは食事の30分~1時間前(胃の中に食べ物が入っていないとき)が目安になります。ちなみに、食後という用法・用量の場合は、食事のあと30分以内(胃の中に食べ物が入っているとき)が目安です。

また、飲み忘れた場合は、1回分の服用をお休みしてください。くれぐれも2回分を一度に飲まないようにしましょう。

飲み合わせの注意点

複数の医薬品を服用する必要が生じた場合には、かかりつけの医師や薬剤師、登録販売者に必ず相談してください。
漢方薬も西洋薬と同じように、一緒に服用すると良くない場合があり、生薬同士がお互いに影響を及ぼすことがあります。
処方名がちゃんとわかる漢方薬なら確認できますが、市販では漢方処方名が商品名になっていない商品や、決まった漢方処方ではなく、生薬成分を組み合わせて配合された医薬品もあります。また、西洋薬との併用に注意が必要なものもありまので、必ずかかりつけの医師や薬剤師、登録販売者に相談してください。

女性におすすめの漢方薬

漢方薬は女性向き

女性の体は、ホルモンバランスの変化や社会環境からのストレスなど、さまざまな要因によって影響されやすいといわれています。漢方では、女性の一生を7歳ごとの変化と捉えていますが、女性はこの周期のライフステージで特徴的な不調が起こりやすいのです。

漢方薬は、思春期・成熟期に起こりやすい生理に伴う症状、更年期に起こりやすい冷え、のぼせ、動悸などの自律神経症状、イライラや落ち込みなどの精神的な症状、さらには老年期の症状などに広く用いられています。

冷え症に向いている漢方

冷えの自覚症状に悩んでいる人は女性の半数近くいるといわれています。冷え症は、いろいろな病気の前兆である場合もあります。しかし、冷えの症状がひどく、手足が冷たくて眠れない、椅子に座っていられないという状態が続いたとしても、検査で異常が見つからなければ、西洋医学では病気とは診断しません。漢方医学は、こうした自覚症状だけでも治療や改善を始められるので、冷え症さんに、とても向いているのです。

Q&A

Q.漢方薬と健康食品・サプリメントとの違いは?
A.大きな違いは、漢方薬は病気の治療や改善に用いる医薬品であり、健康食品・サプリメントは健康維持と健康増進に用いる食品であることです。

医薬品は、医師によって処方される「医療用医薬品」とドラッグストアや薬店・薬局などで購入できるOTC医薬品に分かれます。さらにOTC医薬品は「要指導医薬品」と「一般用医薬品」に分類され、さらに一般用医薬品は、そのリスクによって第1類医薬品、指定第2類医薬品、第2類医薬品、第3類医薬品に分けられます。OTC医薬品の漢方薬は「第2類医薬品」に区分され、294種類が規定されています。

一方、健康食品やサプリメントは日常の心がけとして、健康の保持増進に用いられます。健康食品のなかには、国が定めた特定保健用食品、栄養機能食品などがありますが、いずれも食品なので、病気の治療には用いません。

Q.病院で処方される漢方薬とお店で買える漢方薬の違いは?
A.病院で処方される漢方薬は、医師の診断と処方に基づき使用される医薬品で、これは調剤薬局で薬剤師が調剤します。薬局・薬店・ドラッグストアなどで販売されている漢方薬は、「第2類医薬品」と表示があるOTC医薬品の漢方薬として販売されています。OTC医薬品の漢方薬は基本的に病院で処方される漢方薬から用量を調節しています。病院で処方される漢方薬とOTC医薬品の漢方薬は処方が同じでも、用いられる病気が違うこともあります。

かぜ気味、頭痛、胃腸の不調など軽度な症状や日頃からよく経験する症状については、OTC医薬品の漢方薬を選択(セルフメディケーション)できます。購入するときにわからないことは、薬剤師や登録販売者に相談しましょう。

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