2020.10.01

養生のすすめ

トレーニング

足の冷えの原因と冷え症改善 -足を温める足ツボ-

「毎晩、足が冷たくて眠れない」「足の指先がこわばる」など、冷え症さんのなかでもとくに足の冷えがつらいという人は多いようです。今回は足の冷えにスポットをあて、その原因と改善方法について、ご紹介していきましょう。

足が冷える原因は?

冷えと体温調節

体の冷えは、私たちが本来もっている体温調節機能がうまくはたらいていないために起こります。体は食べ物をエネルギー源として、筋肉や内臓などで常に熱をつくり出しています。血液の流れによって全身に運ばれ、余分な熱は皮膚の表面から放散することで体温を一定に保っています。この体温調節を自立的に行うのが脳の視床下部にある体温調節中枢。熱の産生や皮膚表面での熱の放散を指示しています。

たとえば、寒い環境にさらされたとき、体温調節中枢は皮膚の表面から熱を外に逃がさないようにする指令を送り、必要以上に体温を下げないようにします。具体的には、皮膚の毛細血管を収縮させ細くすることで、血流を減らし、熱の放散を少なくするのです。寒いときに手や足の指先がとくに冷たくなるのは、血液が行き渡らずに、皮膚の表面温度が低くなっているからです

自律神経の乱れ

体温調節には自律神経が大きくかかわっています。
自律神経は、内臓や体温などの機能を正常にコントロールするために、自分の意思とは関係なくはたらいています。しかし、疲労や睡眠不足、ストレスなどがあると、自律神経に負担がかかり、体温調節がうまくいかなくなることがあります。普通の人が寒いと感じない夏でも、手足の先や下半身に冷えを感じるのは、自律神経のバランスが乱れ、血流が滞ったり、そもそも熱や栄養素を運ぶ血液が少なかったりするからです。

足は血液循環が悪い

心臓から遠い位置にある足は、とくに冷えやすい部位です。その理由は、足から心臓に戻る血液が、重力に逆らって心臓に戻らなくてはならないためです。血液を戻すためのポンプの役割を果たすのは、ふくらはぎの筋肉。足を動かせば、筋肉が収縮して、血液を心臓まで戻す力がはたらきます。
筋肉を鍛えておけば、ポンプの力が強くなり、血液の流れが良くなります。一方で、長時間同じ姿勢で足の筋肉を使わないでいると、血液が戻りにくくなり、循環しないため、足先に冷えを感じやすくなるというわけです。

女性は筋肉が少ないから冷えやすい

冷えない体をつくるには、筋肉のはたらきが重要です。たとえば筋肉を動かすときにはエネルギーが必要ですが、そのエネルギーを産生するときに熱が発生します。体の熱の多くが筋肉によってつくられるため、筋肉が増えると体が冷えにくくなるのです。
女性は、相対的に男性に比べて筋肉が少ないため、冷え症になりやすいといわれています。また、女性の体の構造も冷える原因のひとつです。女性は卵巣や子宮などを蔵する骨盤内で血流が滞りやすく、男性よりも冷えやすいと考えられています。

女性ホルモンの乱れ

このほか、冷えは女性ホルモンの分泌とかかわりがあるとも言われています。冷えは血液の循環がスムーズにいかなくなることから生じますが、これはホルモンバランスが崩れ、自律神経のはたらきが乱れることで助長されるからです。
女性は初潮、妊娠・出産、閉経などを経験するタイミングで、女性ホルモンのバランスが大きく変化し、自律神経のバランスを崩しやすくなります。こうした変化の時期に、冷え症になりやすいと考えられています。

冷え症は夏も注意

夏は、エアコンの設定温度が低い部屋に長時間いると、暖房であたたかい冬の室内よりも冷えやすい環境にさらされることがあります。また、冷房によって室温と外気との温度差が10℃近くになることも。屋外と屋内の行き来が多くなれば、ひんぱんに熱の産生と放出とを繰り返さなければならず、自律神経に負担がかかって体温調節がうまくいかなくなり、冷えだけでなく、だるさや胃腸障害といったほかの症状も出てきてしまいます。
また、夏は冷たい食べ物や飲み物を摂り過ぎることで、胃腸が冷えてしまうこともあります。冷たい飲食物は、消化のときに熱が消費されやすいだけでなく、冷えにより消化機能が低下します。冷え症さんは夏こそ油断せず、冷え対策や食生活に注意しましょう。

足の冷えを改善する方法

適度な運動や筋トレを行う

筋肉量が少なくなると、体の熱をつくり出す力も弱くなります。足が冷えるという方は、筋肉の70%が集まるといわれる下半身を中心に鍛えれば、筋肉量の減少を防げます。エクササイズに挑戦し、脂肪を燃焼させるとともに、筋肉をつけて、熱の産生量を増やし、冷えにくい体をつくりましょう。

お風呂に入って下半身を温める

足の冷えには、ゆっくり入浴して、下半身を温めましょう。下半身を重点的に温めたいときは、40℃以下のぬるめのお湯に、みぞおちあたりまでお湯につかる半身浴がおすすめ。20分以上つかることでじわじわと汗をかき、効果的です。
冷え取り上手な人は、入浴剤を上手に活用しています。入浴剤とは、入浴そのものによって得られる、「体を温める」などの温浴効果や、「肌の汚れを落とす」などの清浄効果をより高めるもの。古くから日本人は、天然の温泉や薬用植物による薬湯などの入浴剤に親しんでいることから、入浴剤も人気です。

冷えがつらいときは足のツボを刺激

足の冷えがつらいときは、足下からじんわりと温かくなるツボを刺激するとよいでしょう。ツボを刺激する方法には、指で押したり、お灸など熱で刺激したりする方法などがあります。ここでは、外出先やオフィスで足下が冷えてしまいそうなとき、指を使って簡単に刺激できるツボを紹介します。

冷えトラブルにおすすめのポピュラーなツボ

「三陰交(さんいんこう)」という足の内側にあるツボは、足だけではなく体全体が冷えているときにも効果的です。くるぶしの骨の一番上から指4本分上、すねの骨のすぐ後ろです。押したときに、軽い痛みを感じるところが「三陰交」です。
左右の親指を重ねて、少し痛いぐらいに押します。息を吐きながら数秒押し、1回3~5秒ぐらいを目安にし、1カ所につき3~5回ほど繰り返してください。

足の指の付け根にあるツボ

「八風(はっぷう)」という足の親指から小指までの各付け根の間あるツボも、足だけでなく体全体の冷えに効果的です。足の甲側と足の裏側の両方の、足の親指から小指までの各付け根の間です。左右合わせると、合計8つあるので「八風」と言われています。
親指と人差し指でツボをはさむように、足を上下につまんで強めに押すようにもみます。指先に向かって引っぱったあとに離してください。1カ所につき10回程度行います。足の裏側から各指の間に手の指を差し込み、そのまま足首をぐるぐると回すと、一度にすべての「八風」を刺激することもできます。

血行を良くし、足の冷えに効果的なツボ

「湧泉(ゆうせん)」というツボは、足の裏の親指と人差し指の付け根からのふくらみと、中指と薬指と小指の付け根からのふくらみが交わるところにあり、足の冷えに効果的です。
両手の親指の腹で、強めに数秒押す、数秒ゆるめる、これを3回程度繰り返しましょう。足の血行が良くなり、温かくなります。

足が冷えるときのおすすめ漢方薬

足の冷えに悩む方の諸症状におすすめの漢方薬は、「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」と「桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)」です。

足腰の冷え症に

漢方処方

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

効能・効果

体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り

こんな漢方薬です

足と同様に手先にも冷えを感じる方は、末端まで血液が循環していないことが考えられます。全身に熱を運んでいるのは「血」です。この「血」が不足したり滞ったりすることで、全身に熱が行き渡らなくなります。「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」は、こうした「血」の不足を補い、流れを良くすることで体を温めます。

のぼせて足冷えがする方に

漢方処方

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

効能・効果

比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症: 月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症※、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきび

※血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。

こんな漢方薬です

上半身は熱いが下半身が冷えるという方は、気や血のめぐりが悪く、滞った状態で上半身がのぼせて、下半身が冷えていることが考えられます。漢方では、のぼせと冷えが同時に起こるのは、「血」の流れが滞ることが原因と考えます。「血」の流れが滞ると、体内で熱が偏り、全身に行き渡らなくなります。こもった熱は上へのぼる性質があるので、上半身がのぼせて下半身が冷えるといった「冷えのぼせ」の状態が現れるのです。「桂枝茯苓丸」は、このような冷えのぼせのある人の生理痛などにおすすめです。